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足関節骨折術後の早期荷重: バイオメカニカル解析

  • Kojiro Araki
  • 2016年2月16日
  • 読了時間: 3分

Point

・足関節骨折術後の早期荷重が安全か検証したcadaver study

・両果,三果骨折でも転位や内固定の破綻は生じなかった

・粉砕骨折やsyndesmosis破綻がある骨折以外では早期荷重を推奨する示唆が得られた

◯引用元

◯背景

 不安定型足関節骨折に対して手術を行なった後にどのタイミングで荷重を開始するかについてコンセンサスが得られていない.本研究では足関節骨折術後を再現した屍体モデルで早期荷重のシミュレーションを行ない,転位と転位の時期を評価した.

◯方法

 新鮮凍結下肢24肢を用いた.それぞれ以下のGroupに分けた.

  • Group I (n=6): 両果骨折

  • Group II (n=9): 後果骨片が小さい(関節面の15-20%)三果骨折

  • Group III (n=9): 後果骨片が大きい(関節面の33%以上)三果骨折

 骨折は骨切により発生させ,PITFL,三角靱帯は切断せずsyndesmosisはintactとした.腓骨骨折は整復し3.5mmのlag screw, 4穴LCP fibula plate (DePuy Synthes)を使用して内固定を行なった.Group IIIの後果はCCSを使用し固定した.内果は45mm, φ4.0mmのCCSを使用して固定した.

 骨折部を横断するように変位磁気センサを設置し,ストレス施行中の転位をサンプリングレート100Hzで測定した.各検体をストレス装置に後足部中間位で設置した.垂直荷重は0から1000Nを3Hzで加えた.通常,術後1週は創治癒のために非荷重であり,仮骨が生じるのは6週後であることから5週間のストレスをシミュレーションするため健常人の平均歩数から5000-7000回/日,約50000回/週と計算し合計25000回ストレスを与えた.破綻の定義は骨折部の1mm以上の転位,内固定の折損,新規骨折の発生とした.

◯結果

 全てのGroupで生じた転位は1mm未満だった.

  Group I: 外果 0.1±0.1 mm,内果0.4±0.4 mm

  Group II: 外果 0.6±0.4 mm,内果0.5±0.4 mm,後果0.5±0.6 mm

  Group III: 外果 0.1±0.1 mm,内果0.5±0.7 mm,後果0.5±0.4 mm

 少なくとも64.0% ± 27.9% (64.0%-92.3%)は最初の50000回で転位が生じた.内固定の破綻や新規骨折の発生は無かった.

◯考察

 動物実験において,骨折後の早期荷重はリモデリングを促進し仮骨形成が増加することが報告されている.一方,ヒトつまり臨床においては骨折型が複数あることや手術方法,術後のレジメンが一定ではないことで早期荷重が安全か,あるいは有効であるか明確な答えは出ていない.

Ahlらは46名のの腓骨外果骨折患者に対して術後1日で荷重を許可する群,4週間後に荷重を許可する群に分けて3, 6, 18ヶ月に機能を評価した.その結果,両群に疼痛,浮腫,ROMや主観的機能(歩行や階段,スポーツ)に有意な差が無いこと,両群に転位が無いことを報告した.早い/遅いROM運動,早い/遅い荷重を組み合わせ4群で足関節骨折後の機能を検討した研究では早期荷重を行うことで3ヶ月での機能アウトカムが有意に改善したと報告されている.つまり,早期荷重はリハビリテーションの過程を促進する効果があると考えられる.

 本研究の限界として,靱帯や関節包の損傷を再現できていないこと,屍体を使用した研究であるため骨癒合の程度を考慮できないこと,垂直荷重のみの検討であること,荷重量が1000Nであることがある.臨床では多くの場合機能的装具を装着するので今回実施したような垂直荷重が実際には最も大きいので,本研究の結果は参考になると考えられる.

◯結論

 不安定型足関節骨折の内固定術後を再現した屍体モデルでの早期荷重シミュレーションでは転位,内固定の折損,新規骨折は発生しなかった.

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