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踵骨骨折患者の健康関連QOL

  • Ryota Sugawara
  • 2018年2月24日
  • 読了時間: 3分

Point

・踵骨骨折患者の健康関連QOLを調査した後方視的コホート研究

・踵骨骨折患者は健康関連QOLが低く慢性的なdisabilityに悩まされる

・女性,内科・精神疾患を持つ患者は低く,反対に骨折重症度等は影響しない

〇引用元

〇背景

 踵骨骨折は長期的な能力障害を起こし人々の健康に影響する.今までの報告は合併損傷や患者特性で除外基準を設けているため,踵骨骨折の影響は過小評価されているかもしれない.本研究では踵骨骨折患者のアウトカムと患者特性の概要を提供する.

〇方法

・オランダのLevel1外傷施設における後方視的コホート研究

・調査項目:

診療録から年齢,性別,受傷機転,骨折タイプ(開放/閉鎖,片側/両側),Sanders分類,

合併損傷,ISS,内科疾患,社会経済的地位,精神疾患の既往を調査.Sanders分類はCT画像があるものだけ分類.内科疾患はASA Physical Status Classification Systemで分類.

・フォローアップ:

 全患者に質問紙表をICとともに送付した.4週後返信がないものには催促状を送付した.

最後にすべての対象に電話し欠落データと内科疾患を収集した.

・アウトカム:EQ-5D,EQ-6D,EQ-VASを使用.

・統計解析

対象の患者特性の比較に連続変数はStudent’s t検定,Kruskal-Wallis検定,Mann-Whitney U検定を使用し,カテゴリ変数はChi-square検定を使用した.有意水準は5%.EQ-5Dの計算はオランダの換算表が使用され,スコアをオランダの参照集団と比較した.EQ-5DとEQ-VASの関連はピアソンの相関を使用して求めた.EQ-5DのEQ-6Dの各項目を項目ごとに問題あり,なしに分類し,参照集団と比較した.

〇結果

 125例151骨折が同定されそのうち93例114骨折が対象となった(フォローアップ率74%).経過観察期間は平均86±40ヵ月(30-156ヵ月)である.

Table1に対象の特性を示す.

EQ-5Dの中央値は0.78,EQ-VASの中央値は75であった.EQ-5DとVASの相関は高かった(r=0.717,p<0.001).EQ-5Dの平均は0.67±0.27で,オランダの参照集団の平均は0.87±0.19.対象の健康関連QOLは有意に低い値であった(p<0.001).

 Table2に示すように,内科疾患は健康関連QOLに有意に影響する.ASAⅡの患者はASAⅠよりQOLが低い.また精神疾患の既往がある者のQOLも有意に低かった.教育水準や年齢,損傷重傷度(合併損傷,ISS,骨折型)は健康関連QOLに影響しなかった.

 Table3にEQ-6Dの項目ごとの結果を示す.特に移動能力,痛み不快感,日常活動は中等度の問題を呈した.Fig2に対象の全項目をオランダの参照集団と対比して示す.

〇考察

 QOLに関する先行研究はあるが,本研究と先行研究との違いはすべての患者特性,骨折特性を含んでいることだ(対象を選択していない).よって踵骨骨折患者の信頼できるアウトカムを提供する.

 カナダのVanら,スウェーデンのWestphalら,スイスのBrunnerらの研究に従って,我々も参照集団と比較し,より低い健康関連QOLであることを証明した.これは踵骨骨折が国の基準や健康関連QOLの測定値に関わらず,慢性的な病的状態をもたらす事象であることを示唆しているだろう.

本研究の限界は,後方視的調査のためデータ不備,誤記録の可能性があること,CT画像の不備があり全例をSanders分類で分類できなかったこと,フォローアップ期間のばらつきが大きく結果に影響している可能性があること,アウトカムに影響する可能性の高い初期治療法が著者らの主観的な判断であること,などが挙げられる.

〇結論

 踵骨骨折患者は健康関連QOLが低下し,慢性的な能力障害に苦しむことが明らかになった.さらに,女性,内科疾患,精神疾患を持つ患者は健康関連QOLがより低くなる.


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