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関節周辺骨折における荷重のエビデンス

  • Ryota Sugawara
  • 2016年3月16日
  • 読了時間: 4分

Point

・下肢関節周囲骨折の早期荷重について有効な文献をレビュー

・各関節周囲骨折で早期荷重を行っている論文はいくつかある

・整復損失のリスクが高い骨折については荷重を制限することを推奨

◯引用元

 

◯背景

関節周囲骨折の荷重制限は患部への負荷を減じマルアライメントリスクが減るが、動物研究では荷重したほうが早い癒合が認められる。本研究では関節周囲骨折の早期荷重について有効なエビデンスをレビューする。

◯寛骨臼骨折

寛骨臼骨折後早期荷重を行った研究は少ないがいくつか見つかった。

・Mouhsineらは、前柱後柱、横軸、T-type骨折を手術した高齢者に術後4週で制限無しの荷重を許可し、2年で内固定破綻はないと報告。全例平均12週で骨癒合した。また、前柱または前柱+後方半横骨折固定後の22例(平均49歳)に術後全荷重を許可し最低1年で整復の損失はなかった。

・寛骨臼骨折にTHA施行後早期荷重を行った研究では、早期の弛みやimplant破綻はなかった。

→確固たる手術で治療した寛骨臼骨折の早期荷重は骨折転位のリスクは少ないと思われる。

◯脛骨高原骨折

・Segalらは5mm以上の転位を除外した外側高原骨折86例の手術と保存治療を比較。両群とも装具荷重を行い、手術群でoutcomeが良かった。両群ともX線で2mm以上の転位増強は認めなかった。

・AO41-Bをlocking plateで治療した32例で早期荷重群と制限群に分けた報告では、両群で合併症率は同じで、X線上骨折部転位はなかった。

・Eggliらは高エネルギー骨折の14例にdouble platingを行い10kgの荷重を許可した。全例12週で骨癒合し、固定の損失やX線上の陥没は認めなかった。

→脛骨高原骨折後の早期荷重のエビデンス

・骨折部の転位は少しである ・固定の損失と陥没は少しである ・荷重制限群と同様の結果である

◯ピロン骨折

ピロン骨折では2mmのmalreductionは接触圧が200%近く上昇する。整復損失と術後OAが懸念されるため、早期荷重を検討している論文は少ない。

・AO-Ctypeのピロン骨折26例の研究では、dynamic創外固定後3週で部分荷重が許可された。1例で関節固定術、2例で固定除去後の破綻を認めた。残りの患者は平均14週で骨癒合した。

・非ランダム化試験では、28例がplate固定&非荷重、14例がイリザロフで荷重を許可した。荷重群で骨癒合が早い傾向にあったが有意差はなかった。

・51例の粉砕骨折を治療した大規模研究では、半数が内固定後に部分荷重を行った。残りは創外固定で治療し荷重は制限された。再手術率、OAの発展、疼痛に有意差はなかった。

→ピロン骨折の早期荷重のデータは少なく、推奨を作ることは現時点では難しい。

◯足関節骨折

 最も有力なエビデンスが見つかった。

・早期荷重vs制限のCochraneメタアナリシス研究では、両群で受傷後1年のROM、機能スコア、X線評価で有意差がなかった。

・Finsenらは56例を「早期ROM、外固定なしで荷重待機」「ROM待機、castで即荷重」「ROM待機、castで荷重待機」の3群に分けた無作為研究を行い、3群の機能スコアに差はないと報告。

・Ahlらは「早期ROM、荷重制限」「早期ROM、早期荷重」「ROM待機、荷重制限」「ROM待機、早期荷重」の4群に分けた無作為研究を行い、早期ROM、早期荷重で機能向上を認める傾向を報告。

・Gulらは術後外固定なしで荷重した25例を、cast固定非荷重で治療した過去の報告をcontrol群とし比較した。在院日数、疼痛、機能outcomeに差はなかったが、荷重群で仕事復帰が早かった。

→足関節骨折後の早期荷重のエビデンス

・受傷後1年のROM、機能スコア、X線評価は有意差はない

・在院日数、疼痛強度、機能outcomeに有意差はない ・創合併症、再手術、整復損失に有意差はない

◯踵骨骨折

・Aliらは転位型踵骨骨折25例をイリザロフで治療し、術後3週で部分荷重を行った。再手術はなく、AOFAS scaleは68%の患者でexcellentまたはgoodであった。

・踵骨関節内骨折を観血的整復&リング式創外固定で治療し、即時の全荷重を行ったケースシリーズでは、7例中6例(86%)に変形の残存を認めた。Talaricoらは同様の治療を行った25例では、整復の損失はなく、2年時のMaryland Foot Scoreで92%の患者がexcellentまたはgoodであったと報告した。

・転位型踵骨骨折にscrewと創外固定で治療した39例の研究では、4週で部分荷重を始めた患者で、変形の損失や距骨下関節の崩れはなかったと報告した。

・踵骨関節内骨折をlocking plateで治療した後方視的研究で、12週荷重を10kgまでに制限した58例と6週から漸増的に荷重アップした78例では、両群間の疼痛とAOFASスコアに差はなかった。また、Hyerらは踵骨骨折17例に術後平均4.8週で漸増的な荷重を許可し、踵骨整復損失、インプラント破綻はないと報告した。

→踵骨骨折後の早期荷重のエビデンス

・再手術はなくAOFAS scaleは68%の患者でexcellentまたはgoodであった

・整復の損失はなく、2年時のMaryland Foot Scoreで92%の患者がexcellentまたはgoodである。

◯まとめ

寛骨臼、脛骨高原、ピロン、足関節、踵骨骨折の有効な早期荷重のエビデンスとしては、整復損失のリスクが高いものに関しては荷重を制限することを推奨する。

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