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CTで測定した大腿骨近位部骨折後2ヶ月での大腿筋の左右差

  • Tomoaki Onodera
  • 2016年3月1日
  • 読了時間: 4分

Point

・受傷後2ヶ月の大腿骨近位部骨折患者の大腿筋をCTで評価

・骨折側の筋断面積は9.2cm2ほど減少,筋内脂肪は2.8cm2増加

・骨折側は筋萎縮が進んでいることが明らかとなった

◯背景

 大腿骨近位部骨折患者は年々増加している.受傷前が歩行自立レベルであっても,受傷後1年で半数は自立できないと言われている.

 骨折後,荷重機会の減少や疼痛にて筋力低下・筋萎縮が生じる.それには術後のストレスや治癒でエネルギーが必要となり,筋内のタンパク質が減少するという過程も含まれている.このような筋量の低下や質の低下は骨折後の機能低下の重要なメカニズムである.

 ある研究では,2ヶ月後は体重が6%減少し,その一方で1年後には脂肪が3.6%増加するという報告がある.しかし,筋が組織的にどのように影響を受けるのかを説明している報告は少ない.最近は筋量の減少だけでは加齢に伴う筋力低下を説明できないと言われており,下肢の筋構成の計測が機能的低下を解決するのに役立つと考えられている.

 CTは骨格筋のサイズや構成をみるのに広く使われている.今回Baltimore Hip study (BHS)に参加している患者についてCTで大腿筋の評価した.患側の筋量の低下と筋内脂肪の増加を予想した.

◯方法

 BHS-7に参加している患者を対象とした.BHSは入院患者の前向き研究であり,メタボや神経・筋,身体機能,医学的特徴などを調査している.65歳以上の患者を対象とした.除外基準は病的骨折、骨折前6ヶ月間のベッド臥床,介助歩行、300ポンド(136kg)以上の体重、保存療法の者とした.

 135人がBHSに参加していたが、67人(49.6%)が適応、そのうち50人(74.6%)が参加,ドロップアウトがあり最終的には47人となった.CT scanは術後2ヶ月で実施,大腿中央を計測した.CTのために臥位になれない患者は除外した.64列のCTを使用,すべての画像は一人で解析評価をおこなった.

 CSA(筋の断面積)はSliceOmatic softwareを使用して解析した.IMAT(筋間脂肪)は大腿の筋膜のラインを徒手的に描写することで皮下脂肪から区別し,一度脂肪組織がイメージから出されると個々の筋が特定されることで計測される.骨格筋の萎縮は各筋の平均で、筋内脂質含有量のマーカーとして0-100HUで算出した.大腿の筋のHUは主に大腿四頭筋とハムストリングスとなる.

◯結果

・骨折側の筋断面積は9.2cm2ほど減少,筋内脂肪は2.8cm2増加

・全体的な筋の減少・弱化は3.61HUとなった.

◯考察

 筋萎縮や脂肪への置換は加齢現象として健常の高齢者でも報告されている.先行研究では頚部骨折患者は両脚共に健常高齢者とくらべて筋萎縮があるということが報告されている.筋萎縮や脂肪組織変性は加齢でも生じるが,骨折による疼痛や機能低下からくる荷重機会の減少が更にそれを進行させている.今研究では,骨折側が健側よりもさらにその傾向があるということを示した.これはCTを使用して行なった最初の研究となる.骨折後に筋内の組織が変性していくことは転倒後の患者の機能低下を説明するのに重要である.

 骨折側と健側の差は,機能低下と疼痛以外にも受傷時の外力や術侵襲による生理学的な反応でもある.受傷や術侵襲による炎症のサイトカインが筋の変性を起こし,健患差として生じていると考えられる.

 また,骨折後の健側荷重優位な歩行が健患差にもつながっている.荷重機会の減少がタンパク質の合成を減少,健側は優位に荷重をしているのでトレーニング効果として筋が増量し,差が生まれる結果となったと考えられる.

 下肢骨折高齢患者は3.5年後でも荷重量や膝伸展筋力・下腿筋断面積の減少が見られるという報告もある.下肢の筋の構成を計測することが高齢者の機能に関与するのならば,今回見られた健患差は,近位部骨折患者の機能低下を説明するのに役立つ.

 本研究の限界としては,もともと左右差があり,歩行時のそのような左右差が転倒につながっている可能性があることである. 

 今後は1年後の評価なども実施していく.この過程をより良く理解することは,良い治療をするだけでなく,転倒の危険のある高齢者の機能低下の過程の理解にもつながるかもしれない.

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