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術後理学療法エクササイズ中の生体内股関節負荷

  • Ryota Sugawara
  • 2016年2月29日
  • 読了時間: 4分

Point

・股関節内に機器を埋め込み, 股関節内の負荷を測定した生体力学的研究

・術側片脚ブリッジは歩行時よりも大きな負荷を生じる運動である

・荷重制限がある場合,理学療法エクササイズの決定には注意が必要

◯はじめに

 THAや大腿骨近位部骨折術後, 全荷重を許可するかどうかは術者間でばらつきがある. 過去の研究で歩行中は体重の約250%の股関節contact forceを生じると報告された. しかし, 理学療法エクササイズ(以下, PT-ex)での負荷は不明である.

 本研究は同齢集団の生体内研究で, PT-ex中の股関節contact forceを測定した.

◯方法

対象:6例(男性5, 女性1, 平均年齢58±7歳) 股関節内に人工測定装置を埋め込んだ.

埋め込み機器:遠隔測定データ送信が可能な機器を埋め込み, 測定値は体重で標準化した.

 #1 最大限のBridging

    膝屈曲位の背臥位. 腕は体側に置き, 最大限骨盤を持ち上げる.

 #2 少しのBridging

    同様の姿勢で, わずかに骨盤を持ち上げる.

 #3 術側片脚Bridgind

    同様の姿勢で, 骨盤と対側下肢を持ち上げる.

 #4 対側の片脚Bridging

    同様の姿勢で, 骨盤と術側下肢を持ち上げる.

 #5 等尺性収縮:膝屈曲位

    背臥位で足部は治療台から出して地面に置く.

    足背屈位で地面を押し上げ, 大殿筋収縮させる. 骨盤は後方傾斜する.

 #6 等尺性収縮:膝伸展位

    背臥位, 下肢伸展, 足背屈位. 膝窩部で治療台を押し大殿筋を収縮させる.

 #7 等尺性股関節外転

    背臥位, 下肢伸展位. 外付け機器を付け等尺性外転運動を行う.

 #8 膝伸展位股外転

    側臥位, 膝伸展, 股軽度内旋位で股外転運動. 代償出ないよう注意.

 #9 SLR

    股屈曲30°のSLRを4秒保持.

 #10 背臥位股外転

    背臥位, 踵をわずかに浮かし, 床面上で外転を行い, 元のpositionへ戻る.

 #11 股・膝の屈曲伸展

    背臥位. 股・膝屈曲位から踵を滑らせ伸展していく.

 #12 骨盤傾斜(前傾)

    背臥位で足は治療台から出して地面に置き, 骨盤前方傾斜(脊柱過前弯).

 #13 骨盤傾斜(後傾)

    背臥位で足は治療台から出して地面に置き, 骨盤前方傾斜(脊柱前弯減少).

理学療法エクササイズ

・疼痛なくPT-ex可能となった時のデータを採用. 結果的に術後5-12か月でのデータを解析. PT-exは8回反復し1, 8回目を除外した6回の運動が解析された. PT-exとは別に10m歩行も解析した.

・力は骨頭への接触応力, ねじれモーメント, 曲げモーメントを測定.

・10m歩行時の測定ピーク値を100%に設定し, PT-ex中の荷重がそれより高いものを「高荷重」と分類, 50-100%だったら「中荷重」, 50%より低かったら「低荷重」と分類した.

◯結果

・接触応力:PT-ex#3術側片脚Bridgindは全例ピーク値が100%を超え「高荷重」であった.

・PT-ex#1,5,6,7は歩行中のピーク値よりは低いが「中荷重」の運動であった. 残りの運動は「低荷重」に相当する.

・ねじれモーメント, 曲げモーメント:割愛. 文献参照.

◯考察

 術側下肢の片脚ブリッジは「高荷重」であるがex#2の少しのBridgingは「低荷重」であった. 術後早期のベッド上運動としてBridgingを反対する者もいるが, これは差し込み便器使用時に必要な活動であり高活動を生じないため問題ないと考える.

 荷重制限がある場合, 中~高荷重を生じるPT-exは理学療法時に注意が必要である. 逆に全荷重を許可されたらこれらは許容できる. 筋力強化は理学療法の主要な目的であり, 回復に必要な要素であるが, 時期と運動の種類を見て判断する必要がある.

 本研究では対象者数が6例と少ないこと, 筋力が定量化されていないことが限界である.

◯結論

荷重exは高負荷を生じた. 一般に関節接触力は筋の同時収縮により増加し, これは相互に関節同士を圧迫する. 部分荷重と全荷重を決定するとき, 治療者は歩行中の荷重量と関連付けて判断するべきである.

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