荷重, 非荷重位で行なう大腿四頭筋強化練習で生じる膝蓋大腿関節負荷
- Kojiro Araki
- 2016年2月16日
- 読了時間: 3分
Point
・荷重位と非荷重位での大腿四頭筋強化練習におけるPF関節負荷を比較した研究
・膝関節屈曲90-60度では非荷重位の運動よりスクワットのPF関節負荷が大きい
・膝蓋骨骨折患者での筋力トレーニングを処方する際にも参考になる
◯引用元
◯背景
膝蓋大腿関節痛(PFP)に対して大腿四頭筋強化練習は一般的に行われており, 練習には荷重位と非荷重位で行うものがある. 膝蓋大腿関節負荷(PF関節負荷)を最小限にした状態での大腿四頭筋強化練習方法は不明である. 研究の目的は荷重位と非荷重位での大腿四頭筋強化練習におけるPF関節負荷を比較することである.
◯方法
対象は健常者10名,運動はスクワットと抵抗が変化する膝伸展抵抗運動(VR),抵抗が一定の膝伸展運動(CR)の2つの膝関節伸展運動を実施した.VRはダイナモメーターなど抵抗が常に一定のもの,CRは重錘など関節角度により抵抗が異なるものである.スクワット時の外側広筋の筋活動を参考に膝関節伸展運動の外部抵抗を決定した. 下肢の運動力学的解析に加え,生体力学モデルを使用し膝関節0,15,30,45,60,75,90度のPF関節負荷を算出した.
◯結果
膝関節屈曲90,75,60度では非荷重位での運動に比べ,スクワットでのPF関節負荷が大きかった. 逆に,膝関節屈曲30,15,0度では非荷重位での運動でPF関節負荷が大きかった. CRの膝関節伸展運動はVRの運動に比べ,膝関節屈曲90,75,60度でのPF関節負荷が大きかった.
◯考察
2種類の膝関節伸展運動でPF関節負荷が異なることは脛骨に対してどのような負荷を与えるかにより変化すると考えられる. CRはモーメントアームの変化を考慮した負荷であるが, VRは異なる. それ故にCRのPF関節負荷に大きな変化が無いことに対して, VRでは膝屈曲0(完全伸展位)でPF負荷が最も大きくなっていた.
VRとスクワットのPF関節負荷の関係が異なることはPF関節応力とPF関節接触面積の変化で説明できる. 本研究のモデルでは接触面積は膝屈曲0で最も小さく, 屈曲に従い大きくなる. VRでは膝屈曲に伴いPF関節応力は大きくなるが接触面積が大きくなるため, 相対的にPF負荷は小さくなる. スクワットでは膝伸展に伴い, 接触面積が小さくるが, PF関節応力の減少が顕著であり, 膝伸展に伴いPF負荷は小さくなる.
PFPに対してPF関節負荷を最小限にした大腿四頭筋強化方法と外的負荷を決定することは重要なことである. 本研究の結果はこの選択を助けることになる. 0から90の膝関節運動の範囲でPF関節負荷を最小限にするためにはWBとNWBの運動を組み合わせる必要があることが分かった. 例えば, スクワットは0-45で行ない, VRは90-45で行なうとPF負荷は4.0MPa以下となり運動の組み合わせの中で負荷は最小となる.
PFPの訴えが多い動作である階段昇降ではPF関節負荷は4.0MPaと報告されている15.
PF関節障害のリハビリテーションを始める際には, まずこの水準を超えないように運動負荷をコントロールし慎重に進めるべきである. その点でCRは全ての範囲でこの水準以上となるので, 実施に際して注意が必要である.
また本研究の限界として,結果は計算上の推定であり真のPF負荷を表したものではないことが挙げられる. ただ, 運動や膝関節角度での差は相対的なものであるので参考になるだろう.
◯結論
PF負荷を最小限にするためには, スクワットでは膝屈曲0-45, 膝伸展運動VRでは膝屈曲90-45の範囲が推奨できる. CRは階段昇降の負荷(4.0MPa)で超えるので実施には注意が必要である.
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