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高齢者の上腕骨近位部骨折に対するRSA術後の結節癒合は成績を改善するか システマティックレビュー

引用元

Jain NP.Tuberosity healing after reverse shoulder arthroplasty for complex proximal humeral fractures in elderly patients—does it improve outcomes? A systematic review and meta-analysis. J Shoulder Elbow Surg. 2019

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30593437


Point

・高齢者の重度上腕骨近位部骨折に対するRSA後の成績を結節癒合と非癒合で比較したシステマティックレビュー

・自動屈曲、外旋また機能スコアと結節癒合は非癒合と比べて良好な成績を示す傾向がある

・RSAにおいて結節癒合は非癒合と比べてより良好な成績をもたらすようである


〇背景

 上腕骨近位部骨折は高齢者において多くみられる骨折であり、重度なものは上腕骨近位部骨折全体の5~15%を占めている。骨折部の安定を図る骨接合が推奨されているものの、高齢者の骨質の悪さは合併症をもたらす可能性が高い。近年リバース型人工肩関節置換術(RSA)は、肩関節置換術(HA)に代わり一般的に行われるようになってきている。RSAは腱板に頼らずに三角筋レバーアームを増大させることで上肢挙上を可能とする。最近の研究ではHAと比較してRSAの良好な成績が報告されており、RSAの人気が高まっており、より良い肩関節機能を獲得するために結節修復に重点が置かれるようになっている。

 このシステマティックレビューの目的は、高齢者の重度上腕骨近位部骨折RSA後の臨床的および機能的成績を結節癒合(HT)と非癒合(NHT)で比較することである。


〇方法

以下の基準を満たした研究を対象とし、自動ROM(肩関節屈曲、外転、内外旋)と機能的スコア(CMS、ASES、DASH)、疼痛(VAS)、また感染、神経損傷、脱臼、転位やscapular notchingなどの合併症も調査した。

・上腕骨近位部骨折患者の平均年齢60歳以上の集団

・RSAによる治療

・HAによる治療を含む比較群または比較群なし

・結節癒合の評価する記事

・最低12ヶ月のフォローアップ

統計処理は、術後成績を標準化平均値(SMD)を用いて分析し、有意水準は5%未満とした。


〇結果

[対象]1102件の論文が抽出され、最終的に条件を満たしたのは7つの研究であった。(表1,2)

ランダム化比較試験1件、前向き研究1件、ケースコントロール研究1件、コホート研究3件

平均年齢76.83歳、平均追跡期間は29.84ヶ月、RSAの患者381例から追跡不能等を除外し、313例が対象となった。

骨折型を報告した研究は3つのみであり、4partが75%を占めていた。受傷から手術までは平均6.5±4.2日だった。

結節癒合率は平均70..58%だった。


[術後成績]

ROMは自動可動域を測定し、6つの研究はHT群とNHT群を比較し報告している。(表3)

HT群とNHT群を比較し、屈曲はそれぞれ平均134°および112°でHT群の有意な改善を認めた。(表4,図2)

外転は3つの研究のみの報告だが、それぞれ平均115°および95°でHT群の有意な改善を認めた。(表5,図3)

外旋は5つの研究でそれぞれ平均28°および8°でHT群の有意な改善を認めた(表6,図4) 1つはポイントシステムで報告しており(それぞれ1.9と2.5)両群で有意差はなかった。また、2つの研究では外転90°での外旋も報告しておりHT群はNHT群と比較して有意な改善を認めた。

内旋は1つの研究で有意な改善があり、外転90°での内旋も1つの研究で有意な改善を認めた(表3)。

機能スコアはCMS、ASES、DASH、SSV、SSTを用いて評価された。(表7)

CMSは5つの研究で報告され、平均スコア63.54および56.60とHT群がNHT群より有意に良かった。(表8,図5)

ASESは2つの研究で報告され、NHT群(72.85±3)よりもHT群(76.15±2.6)の方が優れていたが有意差はなかった。

DASH、VAS、SSTは1つの研究で報告され、2群間に有意差はなかった。

SSVは1つの研究で報告され、HT群(86)、NHT群(68)と有意差があった。

[合併症]

Scapular notchingは82例(26.1%)で認めた。

深部感染7例、神経損傷8例、術後転位および血腫が各2例、異所性骨化1例が報告された。


〇考察

 RSAの機能成績は腱板機能にあまり依存しないという利点を有しているが、日常生活動作に不可欠な内外旋が障害されることによる患者満足度は不明であり、回旋可動域と機能成績は結節の強固な固定と解剖学的癒合を試みることで改善される可能性がある。RSAにおけるROMと結節癒合の関係を示したものは少なく、本レビューではRSAにおけるHT群がNHT群と比較してより良好なROM、特に外旋および機能的成績を提供することを見出した。しかし本レビューは異なる集団を比較した調査である。

Bufquinらは結節癒合にて自動外旋が大きくなることを見出したが、その差は有意ではなかったと報告し、Grassiらは肩甲下筋の修復を伴わないRSAでは、結節癒合によって成績に差がなかったと報告している。

 本レビューの5つの研究で機能成績(主にCMS)は有意に良好なスコアを示した。GallinetらとGrubhoferらはCMSに有意差があることを報告したが、Sebastiá-ForcadaらとChunらは良好なスコアを示すものの有意差は認めず、Torrensらは2群間で差を示さなかった。したがってCMSをアウトカム尺度として報告する場合、矛盾する結果が生じる。ASESは2つの研究によりHT群でNHT群より良いスコアを示したが有意差はなかった。

 Scapular notchingは本レビューにおいても全患者の26.1%に生じていた。RSA後のScapular notchingの発生率の報告は19%から96%と幅がある。これは、発生率が追跡期間とともに上昇する傾向があること、またScapular notchinggaが術後成績に及ぼす影響に関するデータが少ないためである。本レビューにて報告された他の合併症に関して統一性は認められなかった。

 本レビューの限界として、①初期研究の質に制限される②1つのみランダム化比較試験が含まれており、本レビューではHTとNHTではなくHAとRSAの間でランダム化が行われた③今回の研究の術後成績は再現性がないかもしくは広く一般化できない可能性がある④各研究で異なるインプラントが用いられた⑤7つの研究のうち外転は3つの研究で、ASESは2つの研究で、DASH,VAS,SSTはそれぞれ1つの研究でのみ報告されており、これらの基準を成績評価に用いることには限界がある⑥7つの研究の381人のみの結果であり、これらの骨折全てを完全に代表するものではないことが挙げられる。


〇結語

RSAの結節癒合はより良好な成績をもたらたす可能性があるが、さらなる研究が求められる。


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